「そもそも借金が支払えないのに、高額な弁護士費用など支払えるのだろうか?」
と心配される方も多いでしょう。

この記事では、一般的な弁護士費用、および、法テラスを利用した場合の弁護士費用について書いています。

債務整理の種類

ひとくちに債務整理といっても大きく分けて以下の種類があり、また、その種類によって必要な費用も変わってきます。
債務整理には大きく分けると以下の3つの種類があります。

  • 任意整理(過払い金請求含む)
  • 個人再生
  • 自己破産

任意整理

任意整理とは裁判所などの公的機関を利用せずに私的に業者と話し合い、債務整理を行うことです。
借金を減額してもらい一括返済する方法や中間利息などのカットによる分割返済の方法があります。
また、TVでよくCMが流れている過払い金請求についても、この任意整理の一種です。

ただし、債務者本人が銀行やクレジット会社などの貸金業者と直接交渉してもなかなか交渉に応じてくれませんので、現実的には弁護士に依頼し、弁護士から各業者へ交渉して頂くことが一般的なスタイルとなります。

個人再生

個人再生は、住宅ローンを除く負債総額が5000万円以下の個人で将来において一定の収入を得る見込みがある個人であれば利用できる制度です。

逆に言えば、
住宅ローンを除く負債総額が5000万円以上(これに該当する人は相当少ないと思いますが)あるか、もしくは、一定の収入を得る見込みがなければ、この手続きを利用することは難しくなります。

したがって、個人再生を利用しようとする時点で無職や生活保護を考えている人にとっては実質的には利用できない方法です。

自己破産においては、住宅も没収されてしまいますが、この制度であれば、住宅ローン以外の借金を圧縮することができます。

自己破産

自己破産とは、裁判所から借金の免責(支払の責任を問わずに許されること)決定を得るための手続きです。
つまり、借金が完全にゼロとなります(ただし、税金や健康保険の滞納についての支払義務は残ります)。

これは多重債務者にとっては大きなメリットなのですが、当然、家や車、生命保険などの自分自身の財産があれば、それらは処分しなければなりません。

また、20万円以上の現金、あるいは、20万円以上の価値がある住宅や車を保有している場合は、管財事件となり、破産管財人(ほとんどの場合は弁護士)がつきます。

この場合は、通常の弁護士費用に加え、破産管財人の報酬も支払う必要がありますので、その分費用も高くなります。

債務整理の費用内訳

債務整理の方法によって、費用の詳細は変わってきますが、主な費用は以下の通りです。

着手金

契約時に弁護士に支払う着手金です。ただし、弁護士事務所によっては資金ゼロでも後払いや分割払いに応じてくれる事務所もあります。

また、法テラスの場合は、収入要件や資産要件を満たす必要はありますが、要件を満たせば、手数料や金利ゼロで5,000円/月からの分割払いに対応してもらえます。

報酬金

弁護士事務所によっては着手金を低く抑える代わりに成功報酬制を採用している事務所もあります。

例えば、借金総額を500万円から100万円に減額した場合、減額分400万円の10%、40万円を報酬金とするようなケースです。
もちろん報酬金は0円で着手金に全ての請求費用が入っている事務所もありますので、契約前に料金体系を細かく確認しましょう。

過払い金返還報酬金

過払い金が返還された場合に、返還金の○○%を報奨金とするような成功報酬型の料金体系です。

手数料

裁判所に支払う各種手数料・印紙代や債権者へ受任通知を発送する場合の郵便費用等です。

債務整理の種類別費用(一般弁護士事務所に依頼した場合)

一般的な弁護士事務所に依頼した場合の債務整理で発生する費用は以下の通りです。

ただし、定価が決まっているわけではありません。
例えば、30分間の相談料でも一般的な弁護士であれば、5,000円ですが、有名弁護士の場合は20,000円を請求する方もいます。

任意整理の場合の費用

任意整理の場合の一般的な費用は以下の通りです。

  • 着手金 債権者1社当たり2万円~5万円
  • 報酬金 借金減額金の10%
  • 過払い金返還報酬金 返還金の20%

着手金の比率を大きくして報酬金の比率を小さくしている事務所もあれば、
着手金の比率を小さくして報酬金の比率を大きくしている事務所もあります。

個人再生の場合の費用

個人再生の場合の一般的な費用は以下の通りです。

任意整理と違い、裁判所を通しますので、裁判所に支払う費用も発生します。

弁護士(代理人)への費用

  • 着手金 30万円~50万円
  • 報酬金 借金減額金の10%~20%

簡単な事件の場合には報酬金は20万円といった固定報酬になる場合もあります。
また、住宅ローン特例ありか、特例なしによって料金が変わってくる場合があります。

裁判所への支払費用

  • 申立金 2万円~3万円(収入印紙代、郵便代、官報広告費用)
  • 個人再生委員 25万円

必ずしも再生委員が任命されるわけでありません。任命されるかどうかは裁判所の判断によりますが、任命された場合、別途、25万円程度の費用が発生します。

全ての費用を合計しますと個人再生の場合、50万円~100万円程度の費用が発生します。

なお、個人再生委員とは、申立人の収入や財産の状況を調査,確認したり,債権評価の補助や,申立人が再生計画案を作成するに際してのアドバイスを行います。弁護士は申立人の代理人ですが、個人再生委員は中立な立場に立つ人です。

自己破産の場合の費用

自己破産の場合は現金や車・住宅などのそれぞれの資産価値が20万円に満たない場合(同時廃止事件)と20万円以上ある場合(管財事件)で費用や免責許可が出るまでの期間が大きく変わってきます。

同時廃止事件の場合の費用

まず、同時廃止事件の場合は以下の通りです。

弁護士(代理人)への費用

  • 着手金 30万円~50万円

裁判所への支払費用

  • 申立金 2万円~3万円(収入印紙代、郵便代、官報広告費用)

全ての費用を合計しますと同時廃止の場合、30万円~50万円程度の費用が発生します。

管財事件の場合の費用

弁護士(代理人)への費用

管財事件の場合は以下の通りです。

  • 着手金 30万円~50万円

裁判所への支払費用

  • 申立金 2万円~3万円(収入印紙代、郵便代、官報広告費用)
  • 破産管財人 20万円

全ての費用を合計しますと管財事件の場合、50万円~70万円程度の費用が発生します。

なお、裁判所への支払費用に関しても立替払い・分割払いを行っている弁護士事務所もありますので、支払が心配な方は、まずは弁護士事務所に相談されることをお勧めします。

法テラスに依頼した場合(民事法律扶助)の費用

民事法律扶助とは?

民事法律扶助業務とは、経済的に余裕がない方が法的トラブルにあった時に、無料で法律相談を行い(法律相談援助)、弁護士・司法書士の費用の立替えを行う(代理援助、書類作成援助)業務です。

法テラスに依頼した場合は、一般弁護士事務所に依頼する場合の半額程度の費用しかかかりません。
ただし、収入要件・資産要件があり、誰でもが利用できるわけではありません。

また、法テラスに依頼する場合のデメリットもあります。
この記事では、概要を記しますので、詳細は以下の記事を参照ください。

⇒ 「法テラスを使うメリットとデメリット」

法テラスの利用要件

以下の収入を超える場合は法テラスを利用できません。

無料相談の場合

世帯人数1人の場合
182,000円以下(大都市圏200,200円以下)

なお、家賃や住宅ローンの支払がある場合は、以下の金額が上乗せされます。
41,000円以下(大都市圏53,000円以下)

民事法律扶助の場合

収入要件に加え、財産が以下を超える場合には、この制度を利用できません。

世帯人数1人の場合

現金・預貯金合計額180万円以下

法テラスを利用した場合の費用

代表的な事例を以下に記します。

任意整理の場合

債権者数11社の場合の主な費用

法テラス利用 一般弁護士事務所
着手金 172,800 220,000~550,000
報奨金 0 0~10%
合計 172,800 300,000~600,000

一般弁護士事務所では成功報酬金を請求するところもありますが、法テラスに依頼した場合は請求されません。

一般弁護士事務所では、債権者1社当たり2万円~5万円の着手金、および、10%程度の報奨金を請求されます。
債権者が11社の場合、着手金だけで20万円、報奨金が10%程度請求されますので、仮に200万円減額となれば、40万円が請求されます。法テラスを利用した場合は半額程度で済む場合が多いです。

個人再生の場合

  法テラス利用 一般弁護士事務所
着手金 162,000~324,000 300,000~500,000
報奨金 0 10%~20%
合計 162,000~324,000 500,000~1,000,000

一般弁護士事務所では成功報酬金を請求するところもありますが、法テラスに依頼した場合は請求されません。

一般弁護士事務所では着手金でおよそ30万円~50万円、報奨金で減額金額の10%~20%を請求されます。
簡単な事件の場合には報酬金は20万円といった固定報酬になる場合もあります。
法テラスを利用した場合は半額程度で済む場合が多いです。

上記は弁護士事務所への支払費用のみです。裁判所への支払費用はどちらも変わりません。
個人再生委員が任命されますと、上記の金額にさらに25万円程度が必要となります。

自己破産の場合

  法テラス利用 一般弁護士事務所
着手金 129,600~275,657 300,000~500,000
報奨金 0 0
合計 129,600~275,657 300,000~500,000

一般弁護士事務所では成功報酬金を請求するところもありますが、法テラスに依頼した場合は請求されません。

一般弁護士事務所では、着手金で30万円~50万円を請求されます。
自己破産の場合においても、法テラスを利用した場合は半額程度で済む場合が多いです。

管財事件になると、このほかに破産管財人の費用が20万円程度発生します。
なお、管財事件となった場合、裁判所への予納金が20万円以上かかりますが、この費用に関しては、法テラスの立替対象とはなりません。

管財事件となることが予想される場合には、20万円を確保しておく必要があります。
一般弁護士事務所では裁判所への予納金についても立替をしてくれ、その立替費用については分割払いで対応してくれるところもあります。

いずれにしろ、全く支払のメドが立たない状態では、弁護士に正式依頼することもできませんが、まずは、早い段階で無料相談を受けられることをオススメします。