通常、自己破産すると全ての債権が免責され、借金がゼロになります。
ただ、内容によっては債務が免責されないものもあります。
この記事では、非免責債権と言われる免責されない債権や免責が不許可になる事由を記入しています。

非免責債権とは?

通常、自己破産すると借金はゼロになりますが、裁判所により破産免責の決定が確定した後も、免責から除外される債権があります。この債権のことを非免責債権と呼び、代表的なものとして税金罰金等があります。

以下にそれぞれの内容を記入します。

租税等の請求権

住民税・所得税・固定資産税

会社員にとっては、通常、住民税や所得税は給料天引きですから、あまり意識されることはないかもしれません。
ただし、失業が元で自己破産を検討されている人ならば、失業してから数か月後に住民税の請求が送られてきます。

私の場合も、まだ失業手当が下りず、生活費のやりくりに困っていた時に、合計40万円近い住民税の請求書(10月末、1月末支払期限の市県民税請求書、約19万円×2通)が送られてきました。

失業手当が入ってくる時期も未定であり、一括で支払えるメドも立っていませんでした。
市役所の納税課に相談したところ、5月末までの分割払いができるとのことでしたので、約48,000円の8回分割払いにしてもらいました。

そういえば、社会人になりたての頃、いまでいうところのブラック企業で働いており、税金の支払いに行くのさえ時間が取れませんでした。そのため、一人の先輩社員が、ずっと自動車税の支払を忘れていた時、自宅に帰ってみると、車が差し押さえされていたという事件があったことを思い出しました。

通常、差し押さえに関しては、裁判所の許可がなければできません。

しかし、地方税(自動車税、住民税や国民健康保険税)の滞納があった場合、地方自治体の徴収課は強制的に差押え手続きをしてくることがあります。

納税課に相談すれば、ほとんどのケースで、分割支払いを認めてもらえますので、最優先で支払いましょう。

国民健康保険税について

国民健康保険に関しては地方自治体によって、国民健康保険料として徴収している自治体と国民健康保険税として徴収している自治体があります。

ただ、日本は皆保険制度といって、全国民が健康保険に入ることとなっているため、名目は違えども実質的にはどちらも同じです。受けられる医療内容や費用が変わるわけではありません。

ただし、徴収権の消滅時効期限だけは、国民健康保険料が2年なのに対し、国民健康保険税では5年となっています。

全国民が保険に入ることとなっており、保険料の支払いは義務です。
こちらについても、滞納があった場合、地方自治体の徴収課は強制的に差押え手続きをしてくることがあります。

クレジットカード会社からの借金と違い、税金や保険料の支払いは電話での催促が頻繁にあるわけではありません。
このため、税金の支払いは後回しにしがちですが、差し押さえの可能性もあり、また、免責されない非免責債権ですので、最優先で支払いましょう。

健康保険任意継続と国民健康保険について

特に、失業や退職が元で債務整理を考えざるを得なくなった場合は、これまでに加入していた健康保険を任意継続する場合と国民健康保険に加入する場合の2通りの方法があります。

私の場合、健康保険任意継続の手続きをしたものの初回保険料の支払いが難しく、一時滞納をしてしまい、資格喪失となってしまいました。その後、顛末書を提出し、資格喪失を取り消して頂きましたが、保険料の支払いに関しては、最優先して支払いましょう。

なお、いくら保険料を支払うかについては、各自治体のホームページで公開されていますので、健康保険任意継続か、国民健康保険か、どちらがメリットがあるのか計算したうえで決めましょう。

特に、それまで高給を取っておられた人であれば、月額保険料が最大で健康保険任意継続の場合で35,000円程度、国民健康保険の場合は75,000円程度になる場合があります。

生活保護受給中の場合

生活保護費をもらっている場合は、滞納分の税金に加え、今後発生する税金についても、一時徴収をストップしてもらうことができます。しかし、社会復帰をすれば、滞納分を含めて納税の義務があります。

なお、税金の支払い義務については5年間の時効が設定されています。このため、病気等により社会復帰が困難で、生活保護費を5年以上受給している場合は、5年を迎えた税金から順次失効されていきます。

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

家庭内暴力が原因による離婚など、明らかな悪意があった場合の離婚に伴う慰謝料の請求については自己破産でも免責されません。ただし、単なる浮気が原因で離婚した場合等の慰謝料については「悪意で加えた不法行為」とまでは判断されないため免責となるケースがほとんどです。

破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

暴行事件、あるいは、交通事故でも危険運転致死傷罪のような重大事故における損害賠償請求権の場合は免責されません。

夫婦間の生活費や子供の養育費に関係する費用

浮気が原因で夫が自宅に戻らず、生活費も入れない。また、子供の養育費についても支払わないようなケースに関しても免責されません。ただし、妻が家計を支えているケースもあるため、それぞれの収入や財産によって判断されます。

破産者が故意に債権者名簿に記載しなかった請求権

知人や友人等からの債務で故意に債権者一覧表に記載しなかった債権については免責されません。

罰金等の請求権

刑事罰等による罰金についても免責されません。

免責不許可事由

非免責債権は、裁判所で自己破産による免責が確定した後も免責されない債権のことですが、そもそも株式投資の失敗や、ギャンブル、浪費などが原因の借金については、免責そのものが認められず、すべての借金が残ってしまう場合があります。

これらの原因を免責不許可事由と呼びます。代表的なものには以下のようなものがあります。

財産の隠ぺい

財産を故意に隠ぺいした場合は、免責不許可となります。財産一覧表に漏れなく記載しましょう。

換金行為

クレジットカードのショッピング枠がある場合、その枠を使って、商品や金券を購入し、現金に換える行為です。
取り立てが厳しくなり、かつ、クレジットカードで大きなショッピング枠がある場合、使いたくなります。
ただし、換金行為を行ってしまうと免責不許可になる場合があります。

自己破産を検討した段階からはクレジットカードの利用をストップしましょう。
デビットカードならば、銀行に預金がある分しか使えませんので、浪費をすることもなく安心です。

偏頗弁済

偏頗弁済とは特定の債権者に偏って債権を返済することを言います。
破産者に20万円以上の現金、または資産がある場合、管財事件となり、破産管財人がその財産を債権額に比例して公平に分配します。偏頗弁済は、この債権者平等の原則に反するため、免責不許可事由とみなされます。
取り立ての厳しい業者に対して、返済したくなりますが、免責不許可事由とみなされる可能性があるため、注意が必要です。

ギャンブルや浪費による財産の減少

株式投資やFX投資の失敗や、ギャンブル、浪費などが原因の借金については、免責そのものが認めらないケースがあります。

詐欺的な借入

借金が返済できる余地がないのにもかかわらず、虚偽の所得証明を提出するなどにより、借入を増やした場合などは免責不許可となる場合があります。