自己破産を検討している時、弁護士に相談してから最終的に免責許可が出るまでの間、どれくらいの期間が必要なのでしょうか?
資産の金額や裁判所によっても異なってきますが、この記事では、一般的なスケジュールを書いています。
同時廃止と管財事件の違い
まず、同時廃止になるか管財事件になるかによって、かなり期間が異なってきます。
同時廃止の場合、半年程度で免責決定になるのに対し、管財事件では一年以上かかるケースもあります。
管財事件とは
自己破産とは,
自分の財産や収入だけでは借金を支払うことができなくなった場合、
破産管財人(ほとんどの場合は弁護士)が、
債務者の財産を売却しお金に換えた上で、そのお金を債権者全員に公平に支払って、借金を清算する手続です。
このように、破産管財人が選ばれて破産手続きをすすめるケースを管財事件といいます。
また、ギャンブル等の散財により破産申告するに至ったケースも免責不許可事由とされ、管財事件となります。
同時廃止とは
一方、債務者の財産が少なく、破産管財人を選んで財産をお金に換えても、破産管財人の報酬などを支払えないと予想される場合は、裁判所は、破産管財人を選ばずに,直ちにその破産手続を終了させます。
このように、破産手続の開始と同時に手続を終了するケースを同時廃止と呼びます。
同時廃止事件となるのは、破産者が持っているそれぞれの財産価値が、いずれもおよそ20万円未満の場合です。
それよりも大きい財産があるときには、破産管財人が選ばれ、管財事件となります。
例えば、不動産・高級車・生命保険や個人年金など、どれかひとつでも20万円以上の資産となるものがあれば、同時廃止とはならず、管財事件となります。
同時廃止の場合のスケジュール
個人の自己破産の場合、およそ90%程度は同時廃止型となっていると言われています。
同時廃止事件の場合のスケジュールは、およそ、以下の通りとなります。
これは、スムースに打ち合わせが進行した場合のスケジュールとなります。
なお、東京地方裁判所の場合は、破産申告の件数が多いことから、
破産申し立てをしたその日に破産開始手続きの決定までされる場合があります。
この場合には、もう少し処理が早くなります。
初回相談 1月4日
依頼 1月11日
受任通知 1月15日
破産申立 4月13日
破産審尋 4月27日
開始決定 5月4日
意見申述期間 7月4日
免責審尋日 7月4日
免責許可決定 7月11日
免責確定 8月10日
上記のとおり、弁護士への最初の相談から約半年で免責許可が決定されます。
それぞれの内容を以下に記します。
初回相談
ほとんどの方は、これまで弁護士と相談したこともなく、また、自己破産等の債務整理に関する知識も少ないでしょう。
まずは、債権の内容や家計の状況について弁護士に相談のうえ、どのような債務処理方法がいいのかアドバイスをもらいましょう。
自己破産よりも他の債務整理のほうがいい場合もあります。
ほとんどの弁護士事務所では初回無料相談を行っています。
また、国が運営している法テラスでは、同一案件で3回まで無料相談を受け付けています。
ただ、最初の面談で、自分と相性のいい弁護士が見つかればいいのですが、そうでない、もしくは、それを判断できない場合も多いので、いくつかの弁護士事務所に相談することをお勧めします。
正式依頼
自分と相性のいい弁護士が見つかれば、正式に委任契約を締結します。
この際、見積書は文書でもらい、着手金以外にどのような費用が発生するか、分割払いが可能かといったことも確認しましょう。
受任通知
契約締結後、弁護士は各債権者に対して、受任通知を発送します。これによって、各債権者からの請求がストップします。
これより後は、個別に債権者に対して返済してはいけません。
自己破産の直前に特定の債権者に対して優先的に返済することを偏頗弁済(へんぱべんさい)と呼びますが、
破産法違反となります。
これは債権者間の公平を保つルールとなり、悪質な場合、免責が許可されない恐れがあります。取り立てのストレスから逃れるため、取り立てが厳しかった業者を優先してしまいがちになるので、気をつけましょう。
準備期間(約3ケ月)
破産を申し立てるにあたっては、各種書類を準備する必要があります。
主な書類は以下の通りです。
- 破産申立書・免責申立書
- 債権者一覧表
- 財産目録
- 家計簿(2か月分)
- 住民票
- 戸籍謄本
- 給与明細書
- 源泉徴収書コピー
- 市民税・県民税課税証明書
- 預金通帳のコピー
- 保険証券のコピー
- 車検証のコピー
等
家計簿はつけていない人が多いでしょうから、自己破産を検討しはじめた時からつけていくことにしましょう。
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また、家計簿をつけて、金銭管理をしっかりすることで、免責決定後もう二度と自己破産することなく、資産を増やすことができます。
また、早い時期から家計簿をつけておくことで、弁護士との委任契約から破産申立までの期間を短縮できる可能性があります。
破産申立
必要書類が全て揃い、着手金の支払いメドがついた時点で破産申立を行います。なお、東京地方裁判所で即日面接を利用した場合は、破産申立をしたその日に破産手続き開始決定までが行われます。
破産審尋
破産の申立から約2週間後に裁判官から審尋(しんじん)があります。
負債額や借金ができた理由などを聞き、同時廃止にするかどうかを判断します。ただ、弁護士と裁判官の間で行われ、本人面接が省略されるケースもあります。
また、東京地方裁判所では、破産申立をしたその日に申立~破産審尋~破産手続き開始決定までが行われます。
破産手続き開始決定
破産審尋から1週間程度で自己破産の開始と同時廃止の手続きが行われます。
また、裁判所から各債権者に対して通知がされます。
意見申述期間
破産手続き開始決定から約2か月間、債権者からの意見申述期間が設けられます。
異議がある場合は、この期間に裁判所へ申述します。
免責審尋日
破産審尋とは異なり、裁判所に出頭して裁判官と面接します。ただし、東京地裁では集団面接となり、1人1分程度で終了することも多いです。
免責許可決定
特に、問題がなければ、審尋から1週間程度で免責が許可されます。
免責許可が決定されてから、2週間ほどで官報に公告が出ます。
免責確定
公告が掲載されてから2週間で免責が確定します。
そして、この時点で職業制限も外れます。
なお、同時廃止の場合、96%以上は申立から免責決定までに3ケ月以内に終了しています。
管財事件の場合のスケジュール
初回相談~正式依頼~受任通知~準備期間(約3ケ月)~破産申立までの流れは同時廃止と同じ流れです。
それ以降の手続きが管財事件の場合、同時廃止に比べて、複雑となります。
また、債権者の数や財産の状況により、スケジュールも変わってきます。
管財人面接
管財人候補となる弁護士と代理人弁護士・債務者本人との三者で面談を行い、債権の状況やこれまでの経緯を確認します。
破産手続き開始決定
管財人との面談の後、数日で破産手続きの開始が決定され、正式に破産管財人が決定されます。
また、破産財団用の口座が開設されますので、債務者はこの口座に予納金を振り込みます。
少額管財事件の場合、20万円強の予納金(主に破産管財人の報酬)を振り込みます。
債権者集会
自己破産の開始決定から、およそ2-3か月後に第一回目の債権者集会が開かれます。債務者本人も出席しなければなりません。破産管財人が財産・負債の状況や免責についての意見を述べます。
ただし、住宅の買い手がつかない場合などは、第二回目・第三回目の債権者集会が開催されます。
債権者集会はおよそ3か月ごとに開催されますので、この場合は、免責許可決定までの期間が遅くなります。
免責許可決定
特に、問題がなければ、1週間程度で免責が決定されます。
免責許可が決定されてから、2週間ほどで官報に公告が出ます。
免責確定
公告が掲載されてから2週間で免責が確定します。
そして、この時点で職業制限も外れます。