自己破産などの債務整理を考えている人にとっては保険料の負担も重くなると思います。

特に、リストラや会社倒産による失業に伴い、債務整理を考えざるを得なくなった人にとっては、これまで給料から天引きされていた保険料が急に自分の財布から支払わなければならなくなるため、支払いが遅れがちになります。

私も債務整理を考えたときに、もっとも支払いが遅れたのが、健康保険料でした。
この記事では

  • 自己破産すると健康保険料を支払わなくてもいいのか?
  • どのように対処すべきなのか?

を書いています。

自己破産すると健康保険は支払わなくてもいいのか?

そもそも自己破産で裁判所から免責許可が出ますと、借金がゼロになります。
ただ、全ての債務、つまり全ての借金がゼロになるわけではなく、そのなかには非免責債権と呼ばれる債権があり、これについては、裁判所により免責が確定した後も支払の義務はなくなりません。

そして、健康保険料もその非免責債権のひとつです。

非免責債権とは?

通常、自己破産すると借金はゼロになりますが、裁判所により破産免責の決定が確定した後も、免責から除外される債権があります。この債権のことを非免責債権と呼び、代表的なものとして税金や罰金等があります。

主な非免責債権とは、次のようなものです。

租税等の請求権(住民税・所得税・固定資産税など)

会社員にとっては、通常、住民税や所得税は給料天引きですから、あまり意識されることはないかもしれません。
ただし、失業が元で自己破産を検討されている人ならば、失業してから数か月後に住民税の請求が送られてきます。

私の場合も、まだ失業手当が下りず、生活費のやりくりに困っていた時に、合計40万円近い住民税の請求書(10月末、1月末支払期限の市県民税請求書、約19万円×2通)が送られてきました。

失業手当が入ってくる時期も未定であり、一括で支払えるメドも立っていませんでした。
市役所の納税課に相談したところ、5月末までの分割払いができるとのことでしたので、約48,000円の8回分割払いにしてもらいました。

通常、差し押さえに関しては、裁判所の許可がなければできません。

しかし、地方税(自動車税、住民税や国民健康保険税)の滞納があった場合、地方自治体の徴収課は強制的に差押え手続きをしてくることがあります。

納税課に相談すれば、ほとんどのケースで、分割支払いを認めてもらえますので、最優先で支払いましょう。

国民健康保険税について

国民健康保険に関しては地方自治体によって、国民健康保険料として徴収している自治体と国民健康保険税として徴収している自治体があります。

ただ、日本は皆保険制度といって、全国民が健康保険に入ることが義務付けされているため、名目は違えども実質的にはどちらも同じです。受けられる医療内容や費用が変わるわけではありません。

ただし、徴収権の消滅時効期限だけは、国民健康保険料が2年なのに対し、国民健康保険税では5年となっています。

こちらについても、滞納があった場合、地方自治体の徴収課は強制的に差押え手続きをしてくることがあります。

クレジットカード会社からの借金と違い、税金や保険料の支払いは電話での催促が頻繁にあるわけではありません。
このため、税金や保険の支払いは後回しにしがちですが、差し押さえの可能性もあり、また、免責されない非免責債権ですので、そのほかの借金よりも優先して、最優先で支払いましょう。

生活保護受給中の場合

ただし、生活保護費をもらっている場合は、滞納分の税金や保険料に加え、今後発生する税金・保険料についても、一時徴収をストップしてもらうことができます。しかし、社会復帰をすれば、滞納分を含めて支払の義務があります。

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

家庭内暴力が原因による離婚など、明らかな悪意があった場合の離婚に伴う慰謝料の請求については自己破産でも免責されません。ただし、単なる浮気が原因で離婚した場合等の慰謝料については「悪意で加えた不法行為」とまでは判断されないため免責となるケースがほとんどです。

破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

暴行事件、あるいは、交通事故でも危険運転致死傷罪のような重大事故における損害賠償請求権の場合は免責されません。

夫婦間の生活費や子供の養育費に関係する費用

浮気が原因で夫が自宅に戻らず、生活費も入れない。また、子供の養育費についても支払わないようなケースに関しても免責されません。ただし、妻が家計を支えているケースもあるため、それぞれの収入や財産によって判断されます。

破産者が故意に債権者名簿に記載しなかった請求権

知人や友人等からの債務で故意に債権者一覧表に記載しなかった債権については免責されません。

罰金等の請求権

刑事罰等による罰金についても免責されません。

上記の通り、国民健康保険の滞納分については、その他の税金と同様に免責されませんので、最優先で支払ってください。

自己破産した場合に税金や健康保険料を支払わなかったらどうなるか

自己破産をした場合に、税金や国民健康保険料等を支払わなかった場合には、財産や給与等が差押えになる可能性があります。

給料の入った預金口座が差し押さえられ、引き出せなくなったという事例もあります。
もっとも、自己破産する人の場合、無職で、ほぼ資産がゼロに近く、差し押さえする資産もなければ、事実上、差し押さえはできません。

健康保険に加入しなくとも良いのか?


保険料の滞納ではなく、保険料を支払えるメドが立たないため、会社を退職した時に、保険に加入しないでおこうと考えられる人もおられると思います。

私の場合も国民健康保険料を計算したところ、毎月74,000円にもなりました。保険に加入せず、全て自己負担であったとしても、毎月74,000円も支払うことはないだろうと考え、保険料の未加入を考えました。

ところが、現在の日本の健康保険制度は国民皆保険となっており、国内に住所があれば年齢や国籍(外国籍の方は在留期間が1年以上と決定された場合)に関係なく、必ず何らかの健康保険に加入しなくてはならないという義務があります。

いくつかの保険がありますが、以下の要件のうち、どれにもあてはまらない人は国民健康保険に加入する義務があります。

  1. 勤務先で健康保険に加入している方とその扶養家族(任意継続含む)
  2. 船員保険に加入している方とその扶養家族
  3. 国民健康保険組合に加入している方とその世帯家族
  4. 75歳以上の方(後期高齢者医療制度の対象者)
  5. 生活保護を受けている方

上記の条件にあてはまらなければ、国民健康保険の加入手続きが必要となります。
そして、もし、加入手続きを取らなかったとしても、以前の健康保険が失効した翌日から国民健康保険に加入したものとして、国民健康保険料の請求がなされますので、最優先で何らかの保険に加入するようにしてください。

失業した場合、どの保険に加入すべきか?

それまで勤務先で健康保険に加入していた方が失業等の理由により、新たに保険に加入する場合は以下の3つの方法があります。

  1. それまでの健康保険を任意継続
  2. 国民健康保険に加入
  3. 家族が加入している保険があれば、その扶養家族となる

それぞれについて、以下に記します。

健康保険任意継続

任意継続できる資格

以下の資格がなければ任意継続できません。

  1. 資格喪失日の前日までに「継続して2ヶ月以上の被保険者期間」があること。
  2. 資格喪失日から「20日以内」に申請すること。(20日目が営業日でない場合は翌営業日まで)

※ 申請については、自宅住所地を管轄する全国健康保険協会の都道府県支部で行います。

資格喪失日(会社の退職日)から20日以内に申請を行う必要がありますので、注意してください。

被保険者期間

任意継続被保険者となった日(退職日の翌日)から2年間
(任意継続の資格喪失の場合を除く)

なお、任意継続に一旦加入すると任意にやめることはできません。
つまり、国民健康保険に加入する、または健康保険の被扶養者になるためという理由では資格喪失をすることはできませんので、加入する前に被扶養者の加入資格や保険料を計算して、最も適切な方法を選びましょう。

任意継続被保険者の資格喪失

次のいずれかに該当するときは、被保険者の資格を喪失します。

任意継続被保険者となった日(退職日の翌日)から2年を経過したとき
(被保険者証に資格喪失予定年月日が記載されています)

保険料を納付期日までに納付しなかったとき
(納付期日の翌日)

就職して、健康保険、船員保険、共済組合などの被保険者資格を取得したとき
(被保険者資格を取得した日)

後期高齢者医療の被保険者資格を取得したとき
(被保険者資格を取得した日)

被保険者が死亡したとき
(死亡した日の翌日)

保険料額

毎月の保険料額については、都道府県によって異なりますので、詳細は以下のページを参照ください。

全国健康保険協会 平成29年度保険料額表

私の住んでいる兵庫県では平成29年度で標準報酬月額により、最低額6,791円~最高32,788円でした。

国民健康保険に加入

国民健康保険へ切り替える場合は、退職日の翌日以降に市区町村で手続きをします。
手続きには「身分証明書」と「印鑑」、また「退職日が確認できる書類」が必要な場合があります。都道府県により多少異なりますので、まずは、電話で役所に確認しましょう。

特に、「退職日が確認できる書類」「社会保険の資格喪失証明書」「雇用保険の離職票」など)は退社した会社から送られてくるまでに、しばらく日数がかかります。必要な場合は、退職日が確認できる書類が送付されてきてからの申請になります。

国民健康保険の保険料について

各地方自治体ごとにより、若干、金額が異なってきます。
「国民健康保険料 ○○市 計算」といったキーワードで検索すれば、保険料が計算できるページが表示されます。
収入の額や住んでいる地域により若干の差はありますが、特に、これまでの収入が多かった人に関しては、任意継続のほうが大幅に安くなる傾向にあります。

例えば、私が住んでいる地域では、任意継続の場合、最大でも月額32,788円ですが、国民健康保険の場合は最大月額74,000円と倍以上にもなります。

国民健康保険と任意継続で、どちらが安くなるかを確認のうえ、手続きを行いましょう。

家族が入っている保険の被扶養者になる

最も保険料が安くなるのが、家族が入っている保険の被扶養者になることです。ただし、これについても以下の条件を満たしていなければ、被扶養者になれません。

被扶養者の範囲

1.被保険者の直系尊属、配偶者(戸籍上の婚姻届がなくとも、事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人

※「主として被保険者に生計を維持されている」とは、被保険者の収入により、その人の暮らしが成り立っていることをいい、この文章においては、 かならずしも、同居している必要はありません。ただし、たまに、仕送りを送るといった程度では、被扶養者としては認定されません。

2.被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人

※こちらの文章においては、直系尊属である必要はありませんが、同居して家計を共にしている状態が必要です。
① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)
本人の兄弟姉妹(二親等)や甥や姪(三親等)だけでなく、配偶者の兄弟姉妹(二親等)や甥や姪(三親等)、曾祖父母(三親等)まで含みます。

② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子

※ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除きます。

生計維持の基準について

「主として被保険者に生計を維持されている」、「主として被保険者の収入により生計を維持されている」状態とは、以下の基準により判断をします。

認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合(同居)
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。

なお、上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合があります。

認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。

いずれにせよ、何らかの保険に入ることは義務であり、かつ、保険料は免責されませんので、条件を満たす最も安い保険を選び、最優先で支払いましょう。