自己破産の処理を正式に弁護士へ委託した後は、いよいよ自己破産の申告に必要な書類を準備することとなります。
かなり大量の書類を準備することとなりますので、
この記事では、自己破産申告に用意しなければならない必要書類、
および、各種書類を準備する際の注意点を記します。

自己破産申告にあたって準備しなければならない資料

管轄の裁判所によって、多少、運用ルールは異なりますが、自己破産申告にあたっては、以下の書類を準備しなければなりません。

  • 住民票
  • 金融機関の取引明細
  • 保険に関連する書類
  • 住宅に関連する書類
  • 自動車に関連する書類
  • 家計簿(2か月分)

以下にそれぞれの注意点を記します。

住民票

住民票は市役所等で発行してもらいますが、この際、記載事項を選択できます。
例えば、本籍地や前の住所、戸籍筆頭者を記載するのかどうかといったことです。

また、申請する人、”個人”の住民票か、もしくは、”世帯住民全員”の住民票かを選択できます。
自己破産の申告にあたっては、以下の住民表が必要となりますので、注意しましょう。

「必要な住民票」

  • 世帯住民全員の記載
  • マイナンバー以外の項目全て記載

これ以外の住民票の場合(例えば、本籍地が記載されていない住民票)、再度、取得が必要となりますので、注意しましょう。

金融機関の取引明細

自己破産にあたって、金融機関の取引明細は必須ですが、最近では紙の通帳がないネット銀行をメインバンクとして利用されている人も多いでしょう。

ここでは、紙の通帳が「ある場合」「ない場合」についての注意点を記します。

紙の通帳がある場合

一般の銀行やゆうちょ等で物理的な紙の通帳がある場合は、
最新の取引明細を記帳し、その銀行通帳を提出すればOKです。
予想外の振込や引き落としもありますので、弁護士事務所に行く前に銀行で記帳しましょう。

ただ、一年程度記載していない場合、古い取引履歴については、“合算”“合計記帳”という項目があるだけで取引内容の詳細を記載していない場合があります。

この場合、一件ごとの取引履歴を要求されますので、金融機関に「合算分についての取引履歴を出力してください」と依頼しましょう。

私も弁護士から「合算分については取引明細を持ってきてください」と言われたのですが、最初、その内容をよく理解していませんでした。銀行のATMで記帳が終了したので問題なしと思っていたら、合計記帳の内容が必要と却下されました。
金融機関によって異なりますが、合算や合計記帳は通帳に以下のように記載されています。

三菱UFJ銀行の場合

年月日  摘要  お支払金額 お預り金額
29-9-29 合計記帳 5 ケン   xxx 円
29-9-29 合計記帳 xxx 円   7 ケン

ゆうちょ銀行の場合

年月日  取扱店 お預り金額 お支払金額
30-01-15 合算1  xxx 円  xxx 円

上記のように取引明細の詳細が記載されていない場合は、金融機関に取引明細の出力を依頼してください。

ただし、金融機関によっては、依頼後、郵送でしか送ってくれない金融機関もあります。
私の場合は、ゆうちょ銀行は、依頼したその場で取引明細を出力して頂けましたが、三菱UFJ銀行では郵送のみの取扱いとなり、取引明細が送られてくるまでに約1週間かかりました。

さらに、銀行口座開設時の住所と異なる場所に引越ししていた場合には、まず、住所変更の手続きをした後でなければ、郵送もされません。

早めに通帳記入を完了させ、“合算”があれば、余裕を持って明細の出力を依頼しましょう。

紙の通帳がない場合

楽天銀行やジャパンネット銀行などのネット銀行の場合は、物理的な紙の通帳がありません。

この場合は、通帳を提出できませんので、ネット銀行にログインし、取引履歴の画面を印刷して提出することとなります。
この場合、注意点としては、取引履歴と支店番号・口座番号・氏名の関連性が分かる画面を印刷して持参する必要があります。

ネット銀行によっては、取引履歴の右上あたりに支店番号口座番号氏名が表示されている場合があります。この場合は、その画面コピーを印刷すればOKです。ただ、支店番号・口座番号だけで氏名が表示されていないネット銀行もありますので、その場合は、キャッシュカードのコピーと一緒に取引明細の画面を印刷して持参します。

また、ネット銀行では取引明細をCSV形式でダウンロードできる機能があります。オンライン家計簿などを使っている場合には取引明細をCSV形式でダウンロードし、未記入の取引がないかなどを確認できますので、大変便利な機能です。

私も、最初は、よく分からず、ネット銀行から取引明細をCSVでダウンロードし、Excelで見やすく加工したものを弁護士に提出しました。ただ、これでは、「後からいくらでも加筆修正ができてしまいますので証拠資料として利用できません」と弁護士から却下されました。

必ず取引履歴と支店番号・口座番号・氏名の関連性が分かる画面を印刷して持参してください。Google ChromeやInternet Explorerでネット銀行にログインし、左クリックから印刷を選べば、取引明細が出力できます。

なお、ネット銀行は使っていてもプリンターを持っていない人もいるでしょう。
私もプリンターが使えなかった時は、セブンイレブンのネットプリントを利用しました。

複数の銀行口座をお持ちの場合は、取引履歴の印刷だけでも時間がかかりますので、早めに準備を開始しましょう。
なお、破産開始申立の一年前からの取引履歴が必要となります。

また、証券会社やFXの口座をお持ちの場合については、それらの取引履歴に関しても出力が必要となります。
特に、株の信用取引やFXでの損失の場合は、ギャンブルとみなされ、免責不許可事由に相当する可能性もあります。全ての金融機関口座について、漏れなく取引履歴を出力し、弁護士にありのままを説明しましょう。

取引明細出力の際の注意事項

本来あるべき収入や支出についての取引明細がない場合は裁判官や管財人から、申告していない金融機関があるのではないかと疑われる恐れがあります。

以下の収入・支出に関しては、銀行の取引明細が必須となります。

「収入」

  • 給料や退職金の振込(給与所得者の場合)
  • 保険解約金

「支出」

  • ガス・水道・電気代などの水道光熱費
  • 電話代・携帯電話代

光熱費や電話代は、銀行引き落としではなく、コンビニからの振込を利用しておられる方も多いでしょう。
この場合は、しっかりと領収書を保存しておきましょう。

家計簿

破産開始申立前の2か月間については詳細な家計簿を記帳することが要求されます。

2万円以上/回の外食やブランド品・大型家電の買い物などの浪費がないかをチェックするためです。
したがって、少なくともこの2か月間は可能な限り無駄使いを減らし、食費や水道光熱費以外の出費は、できるだけ後ろにずらしましょう。

私も破産を考えるようになってから、ようやく家計簿の記帳をはじめましたが、家計簿をつけるだけでマネーリテラシーが高まり、無駄遣いを減らそうという心掛けが強くなりました。また、食事もできるだけ粗食を心掛けるようになったことで、節約につながっただけでなく、より健康的になり、体重も減り、毎日のエネルギーも増加した気がします。ぜひ、これを機会に、家計簿の記帳を継続しましょう。

私が利用しているのはZaimという無料のオンラインソフトです。また、Moneyforwardも非常に人気があるソフトです。
ただし、無料版の場合、金融機関との連携に一部制限がある、あるいは、家族間での共有が不可などの制限があります。

有料版の場合、Zaimで360円/月、Money Forwardで480円/月の費用が発生します。自己破産を考えている時に、数百円の出費ももったいないと思うかもしれませんが、有料版を利用した場合、2万円程度の家計改善効果があるとされていますので、これから生活を立て直そうという方にとってはオススメできるソフトです。

保険関係の書類

自己破産する場合、生命保険などに加入していた人は、解約して解約返戻金を家計に組み込んでおく必要があります。
99万円までの現金は自由財産として没収されませんが、保険等は自由財産とは認められずに、没収になる可能性が強いからです。

解約した際の解約返戻金の金額が分かる書類、および、その金額が振り込まれたことが分かる銀行の取引明細が必要となります。解約返戻金がある代表的な保険は以下の通りとなります。

  • 生命保険
  • 個人年金
  • 傷害保険
  • 火災保険

生命保険や個人年金など毎月引き落としがある保険については、加入していることを普段から覚えているでしょう。
ただ、解約を忘れがちなのが、火災保険です。

通常、ローンを組んで住宅を購入された場合、購入時に30年といった長期の火災保険に加入されているはずです。住宅を売却された場合、残っている期間に相当する保険料が戻ってきますので忘れずに解約返戻金を受け取りましょう。

なお、解約返戻金の振込先ですが、返済が滞っている銀行を指定してしまうと、せっかく解約返戻金が入金されたとしても代位弁済に伴う相殺として自動的に銀行に返済されてしまう可能性があります。返金が滞っていない銀行を選択するか、もしくは、新たに銀行口座を開設し、新しい口座に振り込んでもらいましょう。解約を申し込む際に、解約返戻金の振込口座を新しい銀行に指定すればOKです。

また、全ての保険を解約した場合、万一、大病をした場合に心配だと思われるかもしれません。
自己破産の申告をする場合、大型保険に加入することはできませんが、毎月数千円程度の掛け金で入れる県民共済などであれば、最低限の必要経費と認めてもらえます。大型保険の解約をするとともに、1,000円程度から入会できる保険を探して、入会しておきましょう。

住宅関係

住宅を売却した場合は、住宅の売買契約書、および、それに関連する費用明細が分かる書類、銀行の取引明細を準備しましょう。
住宅売買の場合、収入として入ってくる売却代金以外に、費用としては土地家屋調査士に支払う測量費用不動産売却仲介手数料司法書士に支払う抵当権抹消費用引越し費用があります。
全ての領収書、および、取引履歴が分かる銀行の取引明細を準備しましょう。

また、不動産売却の仲介手数料や司法書士に支払う抵当権抹消費用は、不動産売却と同時に精算できますので、あらかじめ現金を用意しておく必要はありません。

ただし、測量費用、また、引越しの時期によっては引越し費用は不動産を売却し収入が入ってくる前に支払が必要となりますので、費用は事前に準備しておきましょう。
特に、測量費用は、住宅密集地などで測量作業が困難な場所で実施する場合は、50万円以上もの費用が必要となる場合もありますので、事前に費用が準備できないようであれば、不動産業者と相談しましょう。

自動車関係

住む場所によっては例外もありますが、自己破産した場合は、自動車も売却する必要があります。
車検証車の査定書、売却が完了した際の売買契約書を準備しましょう。

私の車は18年も経過した軽自動車でしたので、「値段がつかない」というよりも「廃車費用がかかる」と思っていましたが、ネットオークションの業者に依頼したところ、8,000円で引き取ってもらうことができました。

最近ではインターネットで複数の業者に一括査定を依頼できるサイトもありますので、少なくとも3社以上から見積もりをその見積書も準備しましょう。

書類の準備が整った後の流れ

上記の全ての書類が用意できた時点で、正式に弁護士が破産手続開始・免責許可の申立を行います。管財事件の場合であれば、弁護士と一緒に管財人事務所(通常、裁判所が管財人に指定した別の弁護士)に出向き打ち合わせを行います。
また、めぼしい財産がない場合は、破産管財人が選任されることなく、破産手続き開始決定と同時に破産手続きの廃止が決定されます。