住宅ローンが支払えなくなった時、任意売却を検討しました。
住宅を任意売却するということで債権回収会社・不動産会社とも話し合いを行い、住宅を売却する手続きに入りましたが、3ケ月経過しても売れません。
価格も市場価格の1,800万円からどんどん下げ、1,280万円。確かに、築19年と経過しておりましたが、大手ゼネコンの子会社による高気密・高断熱住宅で、しかも建物面積は151.68平米。建築コストとしては、周囲の物件と大きな価格差がありました。
当時、同じ団地内で2軒ほど売り物がありました。
1軒は築5年ですが建物面積99.78平米で2,150万円。
もう1軒は築12年ですが、建物面積103.78平米で2,100万円でした。
これと比較すると激安だったと思うのですが、なかなか売れない。
あまりに売れないため、心配になり、再度、自己破産をしようと思い、その旨を不動産会社に話をしたところ、
「それでは、弊社で懇意にしてもらっている弁護士と相談してみましょう」と言われました。
不動産会社からの紹介なので、不動産会社に有利な展開に話を進められるのではないかと警戒しました。
また、それまでは法テラスからの紹介を受けた弁護士とばかり相談していましたので、相談料も気になりました。
ただ、その事務所は法テラスとも契約をしているとのことで、相談料も無料にできるとのことでした。
多少の不安はあったのですが、それまでに相談した弁護士からは的確なアドバイスがもらえなかったので、相談に乗ってもらうこととしました。
その2週間くらい前に債務一覧表を作成し、催促状も一通りファイリングしていました。また、質問リストも作成していたため、特に、準備するわけでもなく、不動産会社と一緒に弁護士事務所へ訪問。
まずは、債務一覧表を渡し、借金を積み重ねるに至った経緯を説明。
以下は弁護士とのやり取り
弁護士:「借金総額4,300万円ですか。一般個人の借金としてはかなり多いほうですね。
それぞれの内容を説明していただけますか」
私:「住宅ローンの残高が約2,700万円あります。この分については、3か月前から支払いをストップしています。それ以前にも遅延していましたので、債権は保証会社へ移動しています。また、数年前に国民政策金融公庫から資金を借り、学習塾を始めましたが、失敗。その時の借金がまだ数百万円残っています。ここ一年半くらいは会社員に戻っていましたが、その前の一年くらいは、ほぼ収入がありませんでした。再度、会社員に戻れば、ローンも支払えると思って、いろいろなところから借金を重ねました。それが、積み重なって約4,000万円強の借金になっています」
弁護士:「資料はよくまとまっていますね。通常、自己破産の相談に来られる方は、手ぶらで来られるような方が多いのですが。以前の給料はどれくらいあったのですか?」
私:「年収で1,100万円です」
弁護士:「多いですね。住宅以外の資産はありますか?車や保険など」
私:「車はありますが、軽自動車で12年以上経過し、走行距離も13万キロを超えていますので、資産価値はほぼゼロだと思います。保険はソニー生命の保険と東京海上日動の個人年金に加入しています。ただ、ソニー生命は掛け捨てだったと思います。また、個人年金のほうですが、こちらからも約250万円のお金を借りていますので、解約してもほとんどお金は戻ってこないと思っています。ただ、まだ、解約の申し込みをしたわけではありません」
私:「いえ、もう住宅は残す必要はありません」
弁護士:「ご家族はいらっしゃいますか?」
私:「2年半前に離婚をし、現在は、娘との二人暮らしです」
弁護士:「慰謝料は払われましたか?また、養育費の支払いは?」
私:「両方ともありません」
弁護士:「現在、売却すれば20万円以上の価値がある物は住宅以外に何かお持ちですか?また、現金はいくらありますか?」
私:「現金は約20万円弱です。売却しても20万円以上の価値があるものはありません」
弁護士:「失業中とのことですが、いつから失業手当は入ってくる見込ですか?」
私:「まだ自己都合退職か、会社都合退職かの判定が出ておりません。ハローワークからの判定結果待ちです。もし、自己都合退職ということになれば、あと2か月後から合計で60万円ほど、会社都合退職ということになれば、来月から合計で140万円ほどの失業手当が出る予定です」
弁護士:「住宅の販売状況はいかがですか?」
不動産会社:「当初、市場価格で売り出しましたが、売れないので価格を下げています」
弁護士:「債権回収会社からは、いつまでに売れなければ、競売にかけると言われていますか?」
不動産会社:「今のところは聞いておりません」
私:「三か月、年内一杯をメドにと聞いています」
弁護士:「家が売れた後は、どこに住まれるのですか」
私:「実家に戻る予定です」
弁護士:「住むところはあるのですね。状況はだいたい分かりました。まず、現金で20万円以上保有していれば管財事件となります。破産管財人が任命され、そして最終的には全ての資産が売却され、債権者に支払われます。また、破産管財人への報酬も支払わなければなりません。今、お聞きしたお話しでは、これから失業手当も入ってくるとのこと。また、保険についても解約返戻金があるかもしれないとのこと。さらに、任意売却中とはいえ、まだ住宅もあるとのこと。
現時点で、自己破産する必要は全くないですね。どうしても、今すぐに自己破産したいと言われるのであれば、話は別ですが。まずは住宅が売れてから考えたら、いかがですか?また、現金で20万円以上あれば管財事件となりますので、まずは、最低限支払う必要があるお金を優先して支払いましょう」
私:「優先して支払うということですが、借金の支払よりも税金や保険の支払を優先してもいいということですか?」
弁護士:「そうです。贅沢品を購入してはいけませんが、税金は最優先です。自己破産をしても税金の支払いは免除されません。市役所に相談すれば、住民税の支払は分割もできると思いますので、税金については、一度市役所の納税課に相談してください。税金については、支払が滞れば、差し押さえになる可能性があります。もっともその時点で資産が全くなければ、差し押さえされるものもありませんが。それから、住宅があるのであれば、固定資産税もありますね。こちらは滞納していませんか?」
私:「はい。固定資産税は金額もそれほど大きくないので滞納していません。健康保険の支払も優先して大丈夫ですか?」
弁護士:「大丈夫です。日本では皆保険制度といって、全員が健康保険に入ることになっているので、借金の返済よりも優先して大丈夫です」
私:「生命保険はいかがでしょう。生命保険を解約した途端、ガンになったといった話をよく聞くものですから。義理の妹も生命保険を解約した途端、脳腫瘍が見つかりました。結局、たいした保険金も出ずに、数年後に亡くなりました。ですから、できれば、現在、契約しているソニー生命は契約を維持したいのですが」
弁護士:「完全に掛け捨て型のタイプであれば問題ありませんが、解約返戻金が出るような保険については資産価値があるとみなされますので、解約せざるを得ません。ただ、県民共済のような保険であれば、掛け捨て型で、月々2,000円程度から加入することができると思います。入院時の最低限の保証はありますから、そういったもの検討されてはいかがですか?」
私:「以前の仕事では、毎月の給料が90万円(ボーナスなし)ありました。もし、数か月のうちに仕事が見つかり、以前と同レベルの給料が入ってきた場合でも自己破産の手続きを進めることができますか?」
弁護士:「うーん、できます。何ヶ月か支払を遅延すれば、債権者は一括返済を要求してきます。ただ、90万円の給料が入ってきても、これだけの借金があれば、一括返済は無理ですよね」
私:「無理です」
弁護士:「ですから、自己破産の手続きを進めることはできます。ただ、支払能力があるかないかを判断するのは最終的に裁判所となります。これまでと同じような収入が入ってくるか、住宅が販売できるかなどの様々な条件によって、どういった債務整理の方法が適切かは変わってきます。ただ、現時点で判断するのは時期尚早です」
私:「毎日のように債権者から電話で催促があり、精神的に参っています。どうすれば、いいでしょうか?」
弁護士:「債権者は、それが仕事ですから、仕方ありません。正式に自己破産すると決められたら、こちらから債権者に対して通知書を送りますので、催促はストップします。ただ、さきほども言いましたように、まだ、そのタイミングではないと思います」
私:「では、どうすればいいでしょうか?」
弁護士:「現時点で支払える見込がないですよね。それでは、電話番号を変更するなどして、できるだけストレスを減らしてください。電話を受けても支払の見込がないのであれば、当面は、それくらいしか方法がありません。まずは、生活を立て直すのが先決です。頑張って就職活動をしてください。住宅が売れた後、私が自己破産の手続きを進めても良いのですが、実家に帰られるならば、実家近辺で弁護士を見つけられてもいいです。もし、宜しければ、私が担当させて頂きます。また、状況に変化があれば、ご連絡ください」
不動産会社の紹介だったので、不動産会社に有利なアドバイスになるのかと思ったのだが、結局、今までで一番有益なアドバイスがもらえました。