債務整理とは?
債務整理とは、合法的に借金を減額したり、利息の支払いをカットしたり、支払いに猶予を持たせたり、場合によっては完全に借金をゼロにしたりすることによって、借金生活から解放されるための手続のことです。
債務整理の手続には、大きく分けて以下の4つの方法があります。
- 任意整理
- 特定調停
- 個人再生
- 自己破産
現在、貸金業者からの取り立てが厳しく、精神的に参ってしまっている人は、弁護士に、債務整理の手続を正式に依頼することで、取立を直ちに止めることもできます。
まず、借金問題は合法的に解決できるということを認識しましょう。
以下にそれぞれの債務整理の方法とメリット・デメリットを記します。
債務整理の方法を知ることで、自分に合った適切な対処方法が分かるようになります。
できるだけ早く借金問題を解決して、明るい未来を目指しましょう。
任意整理とは?
Contents
任意整理とは裁判所などの公的機関を利用せずに私的に業者と話し合い債務整理を行うことです。
借金を減額してもらい一括返済する方法や中間利息などのカットによる分割返済の方法があります。
もちろん、どんなケースでも交渉して、借金を減額できるわけではありません。
そんなことが可能であれば、借金している全ての人が減額をして欲しいでしょう。
任意整理が可能なケースのひとつとして、
借りたお金の利息が高金利(利息制限法の上限金利を超える金利)の消費者金融等と取引がある場合があります。
よくTVなどで
「過払い金を取り戻しませんか?」
というCMが流れています。
過去に利息制限法の上限金利を超える金利で支払っていた場合は、
任意整理で借金の減額、もしくは、借金残高よりもさらに過払い金のほうが多く、借金がゼロになるだけでなく、
お金が戻ってくる場合があります。
なぜ、過払い金が発生するのか?
しかし、そもそも、なぜ過払い金なるものが発生するのでしょうか?
貸金業者が融資を行う場合、利息制限法や出資法の影響を受けます。
しかし、過去には利息制限法と出資法の上限金利が異なっており、この間の金利のことをグレーゾーン金利と呼んでいました。
2010年6月に法律が改正され、現在は、どちらも上限は20%になっていますので、グレーゾーン金利は存在しませんが、それ以前に借金をした場合は、このグレーゾーンで金利を支払っていた可能性があるのです。
また、利息制限法を超える利息を取ったとしても罰則がないので、利息制限法を超える利息を取っていた業者が多かったのです。
まず、現在の基準は以下の通りとなっています。
利息制限法・・・制限利率を超える利息は無効にする
出資法・・・・・・・制限利息を超える利息に対して刑罰を課す
利息制限法の上限金利
利息制限法では、以下の金利を超える金利については無効になります。
元金 | 金利 |
10万円 | 年20%まで |
10~100万円未満 | 年18%まで |
100万円以上 | 年15%まで |
なお、20%を超えた場合、出資法違反で刑事罰の対象になります。
この制限のなか、
大手消費者金融では上限金利が18%以下になっている場合が多く、
銀行カードローンでは上限金利が15%になっている事が多いです。
ところが、過去においては、出資法の制限利率が20%ではなく、年率29.2%でした。
年率29.2%を超えると刑事罰の対象となってしまうため、
ほとんどの業者はこれ以上の利率を取らなかったのですが、
29.2%未満であれば、利息制限法違反にはなるのですが、罰則がありません。
このため、この利息制限法と出資法の法律の境目をぬって、
20%以上29.2%未満の利息を取っていた業者が多数いました。
出資法上限29.2%~利息制限法上限(15%~20%、貸出金額により異なる)の間をグレーゾーン金利と呼びます。
そして、これまで、このグレーゾーン金利で支払っていた借金があれば、それは無効となります。
TVなどでよく宣伝している過払い金請求は、上限金利以上で支払っていた過払い金を取り戻す手続きなのです。
そして、任意整理において、過払い金があった場合においては、利息制限法による引き直し計算を行い、
過去に払い過ぎている利息を元本に充当して借金額を減らします。
そして、この計算による借金の減額後、
将来の利息はカットして分割払いをするという交渉や
親族の援助などで一括返済するので借金額を減額して欲しい
といった交渉をしていきます。
ただ、あくまでも任意の整理なので、過払い金があった場合にはその金額は返還されますが、
必ずしも借金が減額されるわけではありません。
また、裁判所は関与しませんので、裁判所に各種書類を提出するといった手間はかかりません。
しかし、やはり専門的な知識が必要となりますので、司法書士や弁護士に依頼したほうがいでしょう。
任意整理のメリットとデメリット
メリット
・利息制限法による引き直し計算で借金が大幅に減る、ゼロになる、あるいは、更に過払い金が返還される可能性がある
上述したように、2010年以前にグレーゾーンで借金をしていた場合は大幅な減額や
過払い金のほうが借金残高より多い場合は借金が完全にゼロになったうえで、借金が戻ってくる場合もあります。
ただし、過払い金請求はいつでもできるというわけではなく、完済してから10年以内という期限があります。
出資法の改正がされたのは2010年ですから、それ以前に借金をしていた場合は過払い金が発生している可能性があります。
・将来の利息のカットや借金が減額される可能性がある
・車や住宅、保険などの財産を残しながら、借金を整理することができる
・特定の債権者を選んで任意整理の手続をすることができます。
(連帯保証人がいる借金に関しては任意整理の対象外とし、知人や家族を巻き込むことを防ぐことができます。)
デメリット
・そもそも任意なので、過払い金があったような場合は別として、借金が減額されない可能性もあります。
特定調停とは?
一般的に任意整理の場合には経験豊富な司法書士や弁護士に交渉を依頼します。
ただ、もちろん、この場合には司法書士や弁護士に支払う費用が発生します。
借金をするくらいですから、この費用の捻出も難しいことがあるでしょう。
この場合、裁判所の調停員に依頼する特定調停という制度を利用する方法もあります。
これは、裁判所の調停委員が当事者間のあっせんをして合意を成立させる方法です。
調停による整理の最大のメリットは、費用がほとんどかからないことです。
ただ、あくまで業者が合意しなければ成立しませんし、業者が出頭、もしくは電話会議に参加してくれなければ、
そもそも話し合いにもなりませんので調停では拉致があかないケースも考えられます。
特定調停のメリット・デメリット
メリット
・費用が安く、専門的知識がなくとも利用できる
・申し立てが裁判所に受理されたという受付票・受理証明書を債権者に送付することによって、取り立てを止めることができる
・債権者との直接交渉は調停員がやってくれる。
まず、最初に、調停委員と申立人(債務者)の間で返済計画等についての打ち合わせが行われます。
その後,第2回目以降は債権者も交えて話し合いが行われていくのですが、債務者と債権者とが直接話し合うわけではなく、債権者と直接話し合うのは,あくまで調停委員です。
しかも,債権者が裁判所に出頭してきた場合、債務者と債権者とはそれぞれ別室で待機します。
一方が話し合いをしているときは、他方はその待合室で待機していますから、顔を合わせることもありません。
また、実際に裁判所まで出向く貸金業者も少ないですから、ほとんどのケースでは電話会議となります。
デメリット
・債権者ごとに上記の手続きが進行するため、債権者が多い場合は解決までに時間がかかる。
・こちらも、任意整理と同じく、あくまで任意となるため強制力がない。
個人再生とは?
個人再生手続きとは、
- 住宅ローンを除く負債総額が5000万円以下の個人で
- 将来において一定の収入を得る見込みがある個人であれば
利用できる制度です。
逆に言えば、
住宅ローンを除く負債総額が5000万円以上(これに該当する人は相当少ないと思いますが)あるか、
もしくは、一定の収入を得る見込みがない場合、
この手続きを利用することは難しくなります。
したがって、個人再生を利用しようとする時点で無職や生活保護を考えている人にとっては、
ほぼ利用できない方法です。
自己破産においては、住宅も没収されてしまいますが、この制度であれば、
住宅ローン以外の借金を圧縮し、住宅ローンを支払い続けることで住宅は残すことも可能です。
おおよその目安として、以下の金額を超える分の金額に関しては借金の返済が免除となります。
100万円未満の人・・・・・・総額全部(100万円未満の金額は返済義務があるので、
個人再生手続きを使うメリットがありません)
100万円以上500万円以下の人・・・・・・100万円
500万円を超え1500万円以下の人・・・・・・総額の5分の1
1500万円を超え3000万円以下の人・・・・・・300万円
3000万円を超え5000万円以下の人・・・・・・総額の10分の1
例えば、1500万円の借金がある場合、
借金が1/5に減額されますので、300万円まで減額されます。
この金額を3年間で返済できれば、残りの1200万円が免除される制度です。
安定収入があり、自宅を維持したいという人にとっては、非常にメリットのある制度です。
ただ、安定収入がない場合は、自己破産を検討せざるを得ないでしょう。
弁護士と相談した際に、
「自宅を維持したいかどうか」
「安定収入があるか」
ということを質問されることが多いですが、
個人再生が利用できるか、または、自己破産すべきかの判断基準となります。
自宅を残したい。
家族と一緒に生活したい。
ということであれば、非常に大きなメリットのある制度ですので
「家族と協力して人生をやり直したい」
という方であれば、できるだけ早く再就職するなどして安定収入を確保し、
個人再生手続きを利用したほうがいいでしょう。
個人再生のメリットとデメリット
メリット
・全ての借金を一括して処理できる。
特別調停のように債権者ごとに手続きが進行するわけではないので、多重債務者の方にとっては、こちらのほうが現実的となります。
・申し立てが裁判所に受理されたという受付票・受理証明書を債権者に送付することによって、取り立てを止めることができる
・資格制限がない
自己破産の場合には就けない資格が出てきますが、その制限はありません。
・住宅ローンの特則を利用すれば、住宅を失わずにすむ。
デメリット
・信用情報に、個人再生手続を取った事実が載ります
・手続きが複雑で難解であり、弁護士に依頼する必要がある
自己破産とは?
自己破産とは、裁判所から借金の免責(支払の責任を問わずに許されること)決定を得るための手続きです。
つまり、借金が完全にゼロとなります(ただし、税金や健康保険の滞納についての支払義務は残ります)。
これは多重債務者にとって大きなメリットなのですが、当然、家や車、生命保険などの自分自身の財産があれば、それらは処分しなければなりません。
また、一部の職業には就けないなどの制限があります。
関係しない方も多いでしょうが、就けない主な職業としては、
生命保険募集人、不動産鑑定士、建設業者、旅行業者、有価証券投資顧問業者、
警備業者、質屋、弁護士、司法書士、公認会計士、税理士
といった職業です。
また、 官報にも名前が掲載されてしまいます。ただ、官報を読んでいる人は、ほとんどいませんので、これは、あまり気にする必要はないでしょう。
自己破産のメリット・デメリット
メリット
・すべての借金を一括して処理できる
・免責不許可事由がなければ、すべての借金が免責される
ギャンブルによる借金を重ねたなどの理由でなければ、原則、すべての借金が免責されます。
・借金の総額に関係なく、誰でも利用できる
デメリット
・住宅など、すべての財産が処分となる
・資格制限がある
・支払不能と判断される必要がある(あくまで、裁判官の判断によるものです)。
債務整理とブラックリスト
債務整理の4種類について話してきました。
しかし、どの方法を採ったとしても、一旦、債務整理を行えば、クレジットカードの新規作成や新たなローンの借入は難しくなります。
諸状況によって変わってきますが、およそ以下の期間については、新規借り入れ等は難しくなります。
任意整理の場合:約5年間
自己破産の場合:10年以内
個人再生の場合:10年以内
特定調停の場合:約5年間